~有限会社オフィスりょう次 代表取締役 金城良次さん
■新聞広告
2000年冬、沖縄の新聞広告にある募集が掲載された。
『求む、沖縄ラーメンの元祖になる人』。
新横浜ラーメン博物館の「新・ご当地ラーメン創生計画」をプロデュースをしていたラーメン界の達人・河原成美さん(博多一風堂)による募集だった。沖縄の麺食といえばもちろん沖縄そば。その当時沖縄にもラーメンはあったが、それらはみな県外からの味であり、沖縄特有のものはなかった。独自のラーメンをもたない地域にラーメン文化を根付かせようという企画だった。

「近くに美味しいラーメン屋さんはありますか?」
那覇・久茂地で『居酒屋野郎りょう次』を経営していた金城良次さんは、その新聞広告を見ながら、お店で帰り際のお客さんからよく訊かれる言葉を思い出していた。地元の人だけでなく、本土からの観光客も多い良次さんの居酒屋では、いわゆる”しめのラーメン”を求めるお客さんも多かったのである。お客さんを楽しくさせることに生きがいを感じて頑張っていた良次さんは考えた。
「ここで応募しなかったら後悔が残る。。。」
そして結局、社員には内緒で応募した。
■”自分の気持ちに嘘はつかない”
審査は一般教養や社会常識テスト、調理実技、面接へと進んでいった。合格者はラーメン界の達人・河原さんのもとで修行し、沖縄独自のラーメンを創り出して横浜ラーメン博物館に出店することになる。
それまでラーメンを作ったことがなかった良次さんは、全ての審査が終了したときには既に落選を覚悟していた。他の応募者の高い調理技術を目の当たりにしたこともさることながら、面接試験の際、良次さんが面接官の質問に答えたとある『一言』が敗北を確信させていた。
(面接官)「河原さんが創った味が金城さんに合わなかったらどうしますか?」
良次さんは自分の気持ちに嘘をつくことをせず、素直な想いを河原さんに伝えようと回答した。
「私はいつもお客さんの喜ぶ顔が見たいので、自分が納得いかない味はお客さんには出しません。」

この「一言」が、琉球新麺・通堂の物語の始まりとなった。後日良次さんのもとに届いた知らせは「合格」だった。
■「感謝・感動・関心」
良次さんの『元祖・沖縄ラーメン』を創り出す日々が始まった。河原さんの指導のもと、福岡では早朝から深夜まで連日ラーメン修行を積み、そして2001年、横浜ラーメン博物館に出店を果たした。その名は『琉球新麺・通堂(とんどう)』。本格博多ラーメンをベースに沖縄の食材を活かした通堂ラーメンは横浜でも人気を博し、1年間の出店期間を通じて多くのラーメン通を喜ばせた。しかし、良次さんが本当に得たものとは、応募から横浜ラーメン博物館を卒業するまでの多くの人々との出会いだったという。
「福岡での修行中も、横浜ラーメン博物館での出店中も、実に多くの先輩・ラーメン店仲間・お客さんに励まされ、アドバイスをもらい、そして勇気付けられました。」

「その中でも、河原さんと河原さんが創り出す味は、自分の人生を変えました。俺も河原さんのようにカッコいい50歳になりたいって心の底から思いましたよ。」
高校を出てから飲食店一筋でやってきた良次さんの経営モットーは「感謝・感動・関心」。 ラーメンという新しい世界に飛び込み、多くの人に支えられながら立派な『沖縄ラーメンの元祖』になった良次さんは、あらためて自らの経営モットーが正しいことを認識したに違いない。
■通堂ラーメン ~おとこ味、おんな味
横浜での成功と『元祖沖縄ラーメン』の称号をひっさげて、2002年、通堂は沖縄に凱旋した。同年オープンした小禄本店をはじめ、現在では西原店、儀保駅前店、寄宮十字路店などでその味が楽しめる。良次さんが創り出した元祖沖縄ラーメンの二本柱は、本格とんこつスープの「おとこ味」と塩スープの「おんな味」。おとこ味は18時間も煮込んだ豚骨のクリーミーなスープに久米島産地鶏と沖縄野菜をベースにしたおんな味のスープをブレンド。いずれも沖縄県産無菌豚と香草塩豚のチャーシューがついてくる。
「沖縄の男と女をイメージした味なんです。」
「つまり、おとこ味は見た目はワイルドですが、優しい味。おんな味は見た目は優しいが、芯が強い味。是非両方試してください。」
ちなみに、通堂とは昔の琉球の港町、通堂町からとった名前。人や情報が行き交い賑わったこの町の名にあやかり、沖縄にラーメン文化が広がることを願って付けた名前だという。
(写真左が良次さん。人事部の上地さんと一緒に)
「この沖縄で、仲間たちと一緒に、ゆっくりでもいいから、しっかりした味を作っていきます。」
「世間は不況、不況と言ってますが、私は通堂ラーメンで沖縄から元気を発信していきたい。」
沖縄にラーメン文化を創った男・金城良次がきっぱりと言い切ったこの『一言』にも、やはり嘘はないはずだ。
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琉球新麺 通堂 ~ 小禄本店、西原店、儀保駅前店、寄宮十字路店

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(写真提供:オフィスりょう次 取材・写真・文 大矢正史/沖縄ライフスタイル)