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真謝浜(阿嘉ビーチ)のサンゴ(1)~気になるレポート

  • 2009年2月27日(金) 09:39 JST

 

■気になるレポート

沖縄・慶良間諸島の阿嘉島に真謝浜(マジャノハマ)と呼ばれる小湾があります。通称、「阿嘉ビーチ」とも呼ばれています。世界規模のサンゴ衰退の中、真謝浜(阿嘉ビーチ)はさまざまな種類のサンゴが色濃く残る沖縄の貴重な海域です。しかし、その真謝浜(阿嘉ビーチ)について、昨秋とても気になる研究レポートが発表されました。レポートは御茶ノ水女子大学でサンゴ研究を行っている服田昌之(はったまさゆき)准教授が発表したもので、真謝浜(阿嘉ビーチ)のサンゴが近い将来死滅する可能性が高いというものです(要旨は以下)。

    

 

 

(レポート要旨)


 阿嘉島の真謝浜のサンゴ群は地元の研究機関やダイビングショップの保全活動により守られてきたが、2006年頃から急速に衰退してきており、放置すれば死滅する可能性が高い。

 サンゴ衰退の原因として以下のことが考えられる。

 A:真謝浜沖に2006年頃建設された防波堤により真謝浜付近の海水が滞留しやすくなったこと
 B:真謝浜に流れ込む河川の河口が2005年頃の工事により人工河口となったことで、河川を流下してくる大量の土砂が直接海に流れ込むようになったこと

 防災や島民・観光客の利便目的で行われたこれらの土木工事自体を否定すべきではない。しかし、真謝浜のサンゴの自然・経済・研究・教育的価値を考えると、保全活動は不可欠である。

 Aについては防波堤の撤去は事実上困難である。しかし、Bについては比較的簡易な河口復元工事により、流下してきた土砂水が真謝浜の自然海岸によって一旦濾過(ろか)され、伏流となって海に流入するという以前の自然河口機能を再び取り戻すことが可能である。

 上記4の河口復元工事は比較的小規模・小額で済む可能性が高く、真謝浜の貴重なサンゴを守るために地元自治体・事業者の取り組みが急がれる。


この服田准教授のレポートを受けて、地元阿嘉島でも改善に向けた取り組みが動き出しつつあります。沖縄ライフスタイルでは、この活動に参加・支援すると同時に今後の動向をお伝えしていきますが、今回はまず、そのレポートを紹介します。

 

■阿嘉島 真謝浜(マジャノハマ)における急速なサンゴ礁の衰退 報告書
 
(マジャレポート08)
 
 2008年9月
お茶の水女子大学
大学院人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻
湾岸生物教育研究センター
准教授 服田昌之 (HATTA, Masayuki)
 〒112-8610 東京都文京区大塚2-1-1
 お茶の水女子大学
 湾岸生物教育研究センター
 TEL   03-5978-5579 
 E-mail  hatta.masayuki@ocha.ac.jp
 
 
要約
 
 阿嘉島のマジャノハマは、ダイビング等の観光に重要なビーチで、オニヒトデの駆除によって良好なサンゴ群集が維持されてきた。しかしながら2006年から2008年にかけて、急速にサンゴの衰退と減少が進行した。サンゴ群体が生きたまま藻類に覆われるという異常な状況や、衰弱死が目立つようになった。またビーチ全体に、藻類の繁茂とシルトの堆積、陸域からの流入物の増加と海水の濁度上昇が顕著になってきた。これらの原因として推定されるのは、伏流となっていた川に人工的に河口を造成したことと、対岸に離岸堤を建造したことである。これらによって、陸上からの有機物と土砂の流入が増加し、海水交換率が低下したものと考えられる。その結果、富栄養化と懸濁物の増加が起こり、サンゴの衰弱と藻類繁茂につながったものと考えられる。河口をふさいで伏流に戻すことは可能であり、サンゴ群集の改善が期待できる。しかし放置すれば1年を待たずして、サンゴ群集と生態系は消失する可能性が高い。
 
はじめに
 
 慶良間諸島のひとつ、阿嘉島のマジャノハマは、防波堤を境に阿嘉港(新港)の東側に位置する。幾本もの根が砂浜の海岸線に対して直行して細長く延び、アナサンゴモドキの大群落が林立するという特異な様相を有する。また、ミドリイシをはじめとする造礁サンゴが密に棲息するとともに、浅く波浪が穏やかで集落から近いという立地条件のために、ダイビングやシュノーケリングの利用が盛んである。このためマジャノハマのサンゴ礁は、阿嘉島の観光資源として重要である。
 1998年の世界的なサンゴの大規模白化のなかでも、阿嘉島周辺の被害は重篤に至らなかった。しかし2001年から2006年にかけてのオニヒトデの大量発生によって、多くのサンゴ礁が事実上壊滅し、復活の兆しは少ない。例えばヒズシハマは、2008年現在においてもまだ、数えるほどのサンゴがあるのみで全体にわたって延々と瓦礫が続くような状態である。いっぽうマジャノハマにおいては、阿嘉島臨海研究所の研究員やダイビングショップのスタッフによるオニヒトデ駆除の努力によって、サンゴ群集の棲息密度は保たれてきた。
 ところが2006年から2008年にかけて、マジャノハマにおいて急速にサンゴの衰退と減少が進行した。2008年6月における状況は危機的であった。今後1年を待たずしてサンゴ群集とサンゴ礁生態系が消滅する可能性が高い。その原因は明らかに、オニヒトデ大発生でもなく、海水温上昇でもない。以下に、その現状と原因推定を簡略にまとめたい。
 
急速なサンゴ衰退の現状
 
 マジャノハマでは2006年からサンゴ群体の衰弱と死滅が目につき始め、2008年には顕著となった。それに伴ってサンゴの被度も急速に減少の一途を辿っている。サンゴの被度が70%を超えるパッチがいくつか残るものの、多くの箇所では被度10%を下回るようになってしまった。種ごとの群体数の減少も顕著である。かつては数多くみられたテーブル状ミドリイシのクシハダミドリイシとハナバチミドリイシはそれぞれ数群体しか残っていない。ドーンミドリイシ(A. donei)も数群体に、ハイマツミドリイシ(A. millepora)はたった1群体になってしまった。優占種のひとつであったコユビミドリイシは、大型群体は皆無となり、10群体に満たない小型群体のみとなった。枝状コモンサンゴが密集していた場所はいずれも岩盤がむき出した状態となっている。マジャノハマの特徴であるアナサンゴモドキの群落も半減した。サンゴ被度の低下など経年変化のデータは他に譲るが、サンゴの減少は枚挙にいとまがない。
 
 個々のサンゴの衰弱死の状況は、原因不明の白化と藻類繁茂が目立ち、特にミドリイシに顕著である。
 図1のウスエダミドリイシ群体は全体的に白化が進行し、死滅した部分に藻類が繁茂し始めている。この白化は、海水温上昇等による急激な白化とは異なり、長期的に徐々に進行するものであり、原因も別であると考えられる。衰弱死と捉えるのが最も適切であると思われる。また図1のハナバチミドリイシでは群体の中央部と周縁部で生組織の消失が見られる。これは近年報告が増加している「ガン化」とも様相が異なる。テーブル状ミドリイシでは、群体が大きく成長すると中央部分が死滅して骨格が露出することはかつてから普通に観察されたことであり、元来の性質であろう。ところが、それが小さな群体でも見られるようになり、しかも群体に占める死滅部分の割合が極めて高くなっているという点が注目される。
 

 
図1 衰弱するサンゴ群体の例. 左:白化と藻類繁茂および死滅の進行するウスエダミドリイシ群体。右:群体の中央部と周縁部の死滅が進行するハナバチミドリイシ。
 

 いっぽう藻類繁茂によるサンゴの死滅も急速に増加してきた(図2)。サンゴと藻類は成長を競合し、サンゴ礁域ではサンゴが勝ることのほうが多い。一般的には、サンゴが死滅して骨格が露出したところに藻類が生育する。図2のように、生きているサンゴ群体の上に藻類が生えるという状況は極めて異例である。このような状況は、2008年になって急に目立つようになった。以前から少しずつ進行してきた現象が、限界点を越えて急速に拡大したのであろう。
 マジャノハマにおける藻類の増加傾向は、サンゴ群体上だけでなく岩盤上でも顕著となってきた。従来は石灰紅藻類が優占する傾向にあった死サンゴ骨格上や岩盤上にも、ラン藻や緑藻を中心に種々の可視的サイズの藻類が繁茂するようになってきた。藻類が繁茂する基盤上には、サンゴの新規加入は見込めない。サンゴ群体の死滅とあいまって、サンゴの減少傾向は今後加速するものと思われる。
 

 
図2 サンゴ群体上または周辺に藻類が繁茂する例. A:被覆状ミドリイシの例。B:藻類が群体に覆い被さって繁茂する枝状ミドリイシの例。C:被覆状コモンサンゴの例。D:センナリヅタに埋め尽くされつつある枝状ミドリイシの例。
 

 
図3 繁茂する藻類の上にシルトが堆積する例.
 
 藻類繁茂に加え、岸に近い浅い場所ではシルトの堆積が顕著になってきた。図3は汀線から10mほど、水深約1mの場所で撮影したものである。岩盤上に藻体数センチメートルの緑藻が繁茂し、その上にシルトが堆積している。シルトの堆積量から、サンゴへの悪影響どころか藻類の生育すら妨げられることは明白である。
 
 サンゴが衰弱していることは、サンゴを観察しているだけでは見えないところにも現れてきた。それは、ミドリイシの産卵と幼生の状態である。ウスエダミドリイシでは、2008年に産卵した群体は約2割だけであり、残りの群体は産卵しなかった。群体の一部分からのみの産卵が多く見られ、産卵した群体の数が少なかっただけでなく、群体あたりの産卵数も少なかった。阿嘉小学校の児童を対象とした産卵観察会で、昨年度よりも産卵の規模が小さかったという生徒の感想にも現れている。一見健康に見えた群体においてさえ、産卵しないか産卵しても卵数が減少していた。じゅうぶんな卵形成にいたらなかった群体が多かった原因は、群体が衰弱して卵形成にエネルギーを投入することができなかったと考えられる。その結果、卵の質が低下して幼生の質の低下につながることもじゅうぶんに考えられる。実際に、2008年のウスエダミドリイシの幼生は不安定であった。変態誘導ペプチドに対する濃度依存性が日ごとに変動し、バクテリアに対する変態反応も再現性がまったく得られなかった。変態抑制ペプチドにいたっては感受性を示さなかった。このような状況の兆候は2006年からわずかに現れ始めていたと、今になって思い当たる。それが2008年になって急に顕著になったと解釈すべきであろう。
 
 このように、目に見えないところにまでも、サンゴへの悪影響が蔓延していたのである。では、その原因は何であろうか。マジャノハマは、工業廃水や生活排水が流れ込むような立地条件にないから、有害物質の流入は考えられない。原因を絞り込むために、次の章ではマジャノハマの立地条件を整理し、それに立脚して原因推定を行ってみたい。
 
マジャノハマの地形的特徴
 
 急激なサンゴ衰退の原因を探るために、まずマジャノハマ周辺の地形条件の特徴を、2000年より以前の状況を念頭において把握してみたい。
 ひとつめの視点は陸域から海へのつながりである。マジャノハマの海側から陸域を遠望してみると、三方を山に囲まれた低地となっていることが明瞭である(図4)。山から流れ降りる雨水がこの低地に集中するような地形であり、事実この場所はかつて水田をして利用されていた湿地であった。現在ではススキ等の植物遷移とともに乾燥化が進んでいるが、真ん中を小川が流れ(図5)、ケラマジカの水場となっている。ケラマジカ観察の主要な場所として、観光価値が生じている。
 

 
図4 海側(南側)からのマジャノハマ遠景. 左:全体像。西側半分はコンクリートで護岸され、東側半分に砂浜が残る。左端は阿嘉港の堤防。右:東側半分の砂浜。小高い砂の小山は工事によるものである。
 
 
 
 
図5 湿地を流れる小川. 晴天が続いた時の撮影のため、流量は少ない。左:低地中央部。右:小川の河口部。流量が少ない時はこのように流れが途絶える。
 

 図5のように、晴天が続いた時には流量が少なく河口部では流れが途絶えるが、周囲の山から雨水が集まる地形から、いったん雨が多量に降ればここから海へ流れ込む淡水の量が多いことがうかがえる。ふたたび海側から海岸線に注目すると、砂浜には砂礫が高く堆積しているという特徴が見られる(図4)。海岸を横から見ると、砂に加えて大きい礫の堆積も顕著であることがわかる(図6)。河口部が粒の大きな砂礫からなるため、ここで川の水が吸い込まれることになる。晴天時に河口部で流れが消失する理由は、川を流れる水が蒸発によって途絶えるためではなく、地下に伏流となるためである。
 マジャノハマの海岸は、波浪によって海底の砂礫が打ち上げられて堆積し、厚い砂礫層の砂浜となっている。かつては陸上から海へ流れ込む淡水は、この海岸に堆積する砂礫の層をくぐり伏流水となっていた。これらの地理的特徴のため、短時間のうちに大量の雨水が山からマジャノハマ後背地に流れ込んでも、湿地の遊水機能によって淡水は時間をかけて徐々に海に流れ出し、砂礫層を伏流する間に砂濾過されて植物遺体等の有機物やシルトが除かれていた。大量の淡水が伏流水として流れ込むという条件が、アナサンゴモドキの大群落が卓越するという特異な環境の要因かも知れない。
 
 
図6 マジャノハマ東側半分の砂浜.
 
 
 
 さて、もうひとつの視点は潮流と波浪である。マジャノハマは阿嘉島の南側に面し、対岸には慶留間島が位置する。これらふたつの島の間は水路となっており(図7)主に潮汐による潮流があるため、海水の交換量が多く海水の透明度が高い。
 

 
図7 阿嘉島と慶留間島の間. 阿嘉大橋から西側の展望。右端は阿嘉漁港の堤防。
 
 また、マジャノハマは東南に向かって慶留間島と渡嘉敷島との間の海域に面しており、台風の度に激しい波浪が打ち寄せる。これらの条件によって、マジャノハマでは海水交換率が高く、陸から流れ込んだ淡水は速やかに除かれ、海水の透明度が高く保たれていた。また、回遊魚の来遊も頻繁にあった。
 
サンゴ衰退の原因推定
 
 サンゴの死滅の原因としては水質悪化、特に赤土流入と富栄養化が一般によく知られている。ではマジャノハマにおけるサンゴの衰弱や死滅の原因は何であろうか。ここ3年ほどの間に起こった変化に原因があるはずである。
 
 この10年にわたって毎年5〜6月にマジャノハマに潜って感じてきたことは、まず透明度の低い日が多くなったことである。海水がかすかに白濁した状態や、プランクトンが多い日が増えた。特にここ3年間は顕著である。これらは富栄養化と海水の滞留が反映されていると考えられるが、生活排水や農地からの肥料の流入は考えられないため、富栄養化の原因は他にあるはずである。注目すべきは2007年から目に付き2008年に顕著となった海底へのシルトの堆積である。2008年は同時に、植物遺体断片の浮遊物が多く見られた。これらは明らかに陸域からの流入による。図8は2007年6月の雨天時の状況である。海面は一面茶色となり、シルトを含んだ淡水が1m以上の厚さの層となった。
 

 
図8 雨天時におけるマジャノハマへの土砂流入の例 左:海上から海岸方向。右:海面下。上層1m以上がシルトを含んだ淡水の層となっている。
 

 かつては大雨が続いたときでも、大量の淡水が海面に層をなすことはたびたび経験したが、これほどまでに土砂が流入することはなかった。最近になって土砂が流れ込むようになったのである。その原因は何であろうか。
 マジャノハマに流れ込む川は、河口部で伏流となっていたため、土砂はここで濾過されていた。その状況が変わって、土砂が直接に海へ流れ出るようになったのである。2008年の河口部を図9に示す。敷設した道路の下を暗渠とし、海に向かって河口部の流路が新たに開かれている。晴天が続いて川の流量が少ない時の撮影のため、河口部では水が涸れている。しかし、流路は周囲の白い砂礫とは違って茶色くなっていることが明瞭である。これは土砂が流れた跡であることが明らかである。
 
 
 
図9 新規造成された河口. 晴天が続いた時の撮影のため乾燥している。 左:道路下暗渠からの排水護岸部分。右:排水護岸から海岸線への流路。大雨の後には大量の淡水が土砂と共に海に流れ出した跡が残っている。
 

 流下してきた水がこの人工河口に集中し、一気に海に流れ出る構造となっている。かつては、河口部は広い面積の海岸に吸収される地形となっていた。つまり、この河口造成によって、かつては濾過されていた土砂が、濾過されずに海へ流れ出るようになってしまったのである。濾過が成されなくなれば植物遺体断片も流出量が増加するし、有機物は砂中の微生物に分解されることなく海に流出する。シルトの堆積、海水濁度の増加、植物遺体断片浮遊物の増加、富栄養化、いずれも、この河口部造成を主たる原因とすれば説明できる。
 マジャノハマは本来であれば海水交換率が高い地形条件にあり、海水が頻繁に交換されるのであれば、陸域からの流入物はすみやかに除去されるはずである。海水が滞留するようになったこともサンゴ衰退の要因であり、その原因を探し当てる必要がある。
 図10はマジャノハマの沖側に建造された離岸堤である。これは、阿嘉港防波堤が大波によってたびたび倒壊したため、南からの波浪を低減する目的で2006年前後に造られた。
 
 
図10 離岸堤. 左:阿嘉港からの展望。増設した阿嘉島の港堤防の向こうに離岸堤が半分ほど見えている。右:マジャノハマ西端からの展望。正面に離岸堤、その向こうに渡嘉敷島が見えている。
 

 阿嘉島と慶良間島の間の水路はマジャノハマの海岸と並行の方向の潮流を有する。これに対して、南からの波浪はマジャノハマ内と水路との間の海水移動を増加させる。これによってマジャノハマの海水交換率は高くなる。離岸堤によって南からの波浪が止められたことによって、マジャノハマの海水が滞留するようになったものと考えられる。
 
状況改善のための提言
 
 まず、海水交換率の低下をもたらしている原因除去となっている対岸の離岸堤であるが、その撤去は困難である。もしも阿嘉港があと20メートル西に建造されていたならば、波浪の影響は格段に小さかったはずで、離岸堤防も不要であったと思われる。しかしながら、設計ミスによって波浪の影響が大きい阿嘉港の位置を変更することも今更できないし、離岸堤によって波浪が低減され阿嘉港が護られている現実もある。コストの面からも現実的ではない。
 今すぐにでも可能なことは、マジャノハマに流れ込む川の河口を、通水性の高い砂礫で埋め、流下する水が海岸線に広くしみ込むようにすることである。川の流路を複線化し広い面積で伏流となるようにすれば効果が高くなる。土砂の移動だけでよく、コンクリート等による建造物は全く不要である。海岸線に砂礫を復活させることで陸上から流入する有機物とシルトが砂濾過されるようになれば、現状の富栄養化とシルト堆積および浮遊物の状況は改善するはずである。富栄養化が改善すれば海藻繁茂と透明度悪化の状況が好転するであろう。その結果としてようやく、サンゴの衰退が改善に向かうことが期待できる。マジャノハマは阿嘉島の観光資源として極めて重要である。わずかな砂礫移動の工事だけでマジャノハマの観光資源たるサンゴ群集が保全できるのであれば、費用対効果は絶大である。
 将来的には、湿地帯をケラマジカの水場となるよう保全して観光資源のひとつとするとよい。湿地状態を保つには、浅い水たまりを造成するように毎年わずかな量の土砂の浚渫を継続するとよいであろう。そのためには小型重機でじゅうぶんであり、費用も少額ですむ。浚渫土は有機物による養分と保水性に富むので、畑に散布補充すれば土質改善と施肥の効果が得られるであろう。廃棄物処理費用が生じないだけでなく、地元の農業に貢献できるとなれば、費用対効果は大きい。
 
 残念なことに慶良間でさえ良好なサンゴ礁はわずかしか残っていない。そのなかでも、岸からすぐにサンゴ礁があるというのは数少ない。貴重な自然環境というばかりではない。阿嘉島は観光収入で成り立っている。ダイビング以外の目的で訪れる観光客も少なくない。ダイビングとシュノーケリングに魅力的なマジャノハマを失うことは、経済的にも大打撃となるのである。地元の子供たちにとっての遊び場として教育の場としての意義も大きい。マジャノハマのサンゴ礁環境が失われることがいかに大きな損失なのか、経済的および教育的側面からだけでも試算して欲しい。マジャノハマのサンゴ礁保全のための河口復元工事に沖縄県や座間味村の補正予算での手当ができないものであろうか。阿嘉島の民宿とダイビングショップが費用を負担してでも、マジャノハマ河口復元を行う価値があろう。それほどまでに緊急かつ重要な問題である。本報告が少しでも活用されることを願う。
 
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写真・報告書:服田昌之/お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻湾岸生物教育研究センター准教授

(取材:大矢正史/沖縄ライフスタイル)

 

 

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